宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』 -- 成瀬シリーズ第3弾 膳所(ぜぜ)から京都大学への通学ルートは……

今年のノーベル生理学・医学賞の坂口志文さんは滋賀県長浜市出身

 京都大学出身で今年2025年10月にノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文さんは、実家が琵琶湖東岸で東海道新幹線の米原駅よりも北側の長浜市にあります。滋賀県は京都府の隣ですが、長浜市は県の中では京都から遠いほうに位置します。

 この話しを聞いた時に、実家から通ったのか、大学近くに住んでいたのかーーが気になりました。途中、米原・京都間を新幹線を使って時間を短縮することもできなくはありませんが、米原駅に停まるこだま号、ひかり号は本数が少ないですし、朝早く、夜遅くはさらに限られ、大学で研究する時間を確保するにはあまり適さないように思われます。そもそも学生に新幹線通学は贅沢だとみられたでしょう。一つの推測にすぎないのですが、やはり大学の近くに住んでいたと考えたほうが自然でしょう。

宮島未奈さんの小説、成瀬シリーズで成瀬あかりは滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)出身

 そんなことを考えていたときに頭に浮かんだのが昨年2024年に本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』と、その続編『成瀬は信じた道をいく』の2つの小説でした。滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)に住む成瀬あかりは大学受験で合格した京都大学理学部へ自宅から通うことに何の迷いもなかったのです。大津市は長浜市と違って京都に隣接しており、膳所は京都大学の通学圏内と考えられていたということなのでしょう。

 膳所駅にはJR東海道本線と京阪石山坂本線があり、主に次の三つのルートが考えられます。

  (1)JRで京都駅まで行き、そこで京都市営地下鉄に乗り換え、今出川駅または東山駅からバスを使うルート

  (2)JR東海道線・山科駅で京都市営地下鉄に乗り換え、東山駅でさらにバスに乗り換えるルート

  (3)京阪線でスタートし、乗り入れている京都市営地下鉄の東山駅でバスに乗り換えるルート

第3弾『成瀬は都を駆け抜ける』でも通学シーンが登場

 そして、成瀬シリーズの第3弾がつい先ごろ、12月1日に発売されました。大学1回生となった成瀬あかりが描かれた『成瀬は都を駆け抜ける』です。

 成瀬シリーズは成瀬あかりの存在を中心に、それぞれの章で彼女のまわりの人たちが主人公となって成瀬との関わりが展開されます。お母さんの成瀬美貴子(みきこ)が主人公となった「そういう子なので」では、滋賀県のローカル局、びわテレが地元の人物紹介番組で成瀬あかりを取り上げます。母親も出演し、成瀬の通学シーン撮影に同行し、京都大学での取材を横で見ることになります。

 出発地点は京阪膳所駅で、そこで取材クルーと待ち合わせ、二回の乗り換えを経て百万遍(ひゃくまんべん)のバス停に到着したとあります。つまり(3)の京阪ルートーー京阪のびわ湖浜大津駅乗り換え、直通で乗り入れている京都市営地下鉄東西線・東山駅で市営バスに乗り、京大の北部キャンパスに近い百万遍バス停までのルートーーであったことが再確認できました。

 実は、父親が成瀬あかりについていったこともあります。第2巻『成瀬は信じた道をいく』で受験シーンを取り上げた「成瀬慶彦(よしひこ)の憂鬱(ゆううつ)」では、あかりのことが心配で心配でたまらない父、慶彦が試験日当日、試験会場までついていきます(送り届けます)。成瀬は成瀬らしく事前に試験会場に向かうJRルートと京阪ルートの両方を試していました。そして、「気に入った」と言って選んだのが京阪ルートでした。通学時間はだいたい1時間というのですから、東京では普通の移動時間です。

「京都を極める」--第3弾の中心テーマです。成瀬は100の観光名所を巡ることを目標にします。大学で新たに知り合った友人たちのほかに、第1弾、第2弾で関わりがあった人たちも巻き込み、最後に制覇したのは……

 読んでいて自分が励まされているように感じる一冊でした。

(2025年12月1日)

※ある書店では『成瀬は都を駆け抜ける』特製ブックカバーが用意されていました。クリスマスの雰囲気が感じられるカバーになっていて、迷わずに付けてもらいました。情報としてお伝えしますが、期間限定、枚数限定、店舗限定かもしれません。カバーの色も店舗あるいは地域によって違っているようです。