2025年 F1 シンガポールGP ドライバーの熱中症対策、ヒートハザード規則がF1で初めて適用

 2025年10月3日から5日にかけて、シンガポール市街地のマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットでF1 2025 第18戦 シンガポールGP が開催されました。
 そして、ドライバーの熱中症対策であるヒートハザード規則がF1で初めて適用されました。
 車体にドライバー・クーリング・システム(DCS)を搭載し、ドライバーが着用するベストの内部チューブに冷媒を循環させて体温を下げる仕組みです。ドライバーがベスト装着に違和感があるなどの理由で着用しない場合は、代わりに0.5キログラムのバラストを積む必要があります。

 ヒートハザード規則は、気温が31度を上回ると予想される場合に適用されます。上の表は、2022年以降のシンガポールGP開催日における気温と降水量を示したものです。最高気温を確認したところ、過去3年の開催9日間のうち、31度を下回った日はわずか1日だけでした。

 シンガポールGPでは、練習走行(Practice)が陽の高い時間帯から始まります。決勝レースは日没後にスタートするナイトレースで、昼間よりも気温は下がるものの、シンガポール特有の高い湿度は夜になっても続きます。こうした環境の中、特に決勝レースでは1時間40分以上にわたってコックピット内でマシンを操り続けるドライバーに、大きな負担がかかります。レース後には体重が3〜4キログラム減ることもあると言われています。

(参考)シンガポールと東京の気温と降水量

 シンガポールGPは、マリーナ・ベイ・サンズのあるエリアから運河を挟んだ向かい側の市街地コース、マリーナ・ベイ・ストリート・サーキット(一周4.927キロメートル)で開催されました。大観覧車シンガポール・フライヤーへ入るあたりからメインスタンドのあるピット周辺までがレース専用道路で、それ以外の大部分が通常、一般道として使われている公道区間です。

 コース周辺には、マーライオンに近いザ・フラートン・ホテル(旧郵便局)、地下鉄シティホール駅近くのナショナル・ギャラリー・シンガポール(旧最高裁判所、旧市役所)、教会のような形のビクトリアコンサートホールなど歴史的建造物があり、ナイトレースではそれらがライトアップされ、壮厳な雰囲気を醸し出しています。また、アンダーソンブリッジは上部にアーチがかかっている双方向の橋ですが、そのうちの一方向だけの狭い中を高速でマシーンが通過するスリリングな場面もあります。
 ちなみに、ナショナル・ギャラリー・シンガポールでは、かつての法廷室や当時のドーム型屋根などが建物内部で保存され、公開されています。絵画や書など所蔵品の種類も多く、それらを見るだけでも価値あるものとなっています。

 シンガポールGPは2008年に始まって以降、COVID-19の影響で2回中止となりましたが、今年2025年で16回目の開催となりました。初開催直後はマリーナ・ベイ・サンズ・ホテル(2010年開業)が建設中で、F1レースを世界に配信する国際映像に縦に伸びる3棟が映り、「何の建物なのか」と話題になったこともありました。
 歴史的建造物だけでなく、新しく作られるこの都市のランドマークが対象的で、それらが共存する姿がシンガポールの見どころでもあります。

(2025年10月3日~5日)